むすびつく・つなぐ・みせる








折り紙に関して、大学時代に行ったことについて書きます。

ORIGAMI CHALLENGEという企画をつくりました
九州大学折紙同好会ORUTOという同好会をつくりました
折展 ORI-TENという作品展をひらきました

ORUTO



「九州大学折紙同好会 ORUTO (オルト)」は、私が入学した九州大学に折り紙サークルがなかったために、2013年10月に立ち上げました。

各地の大学に折り紙サークルが次々と生まれる直前の時期でした。
設立にあたって、理念のような大きな目的を掲げていたわけではなく、学内に愛好家がいるのならぜひ交流したいと考えたことによる行動でした。
ちなみに、このblogもこの時期にはじめました。

後に、組織の持続・連携のための制度づくりを考えることになります。

ORUTO自体の活動状況や、他大学の団体と交流する中で、わかったことがあります。

それは、多くの人は責任感をもって団体の運営にかかわることが得意ではない、ということです。
団体の設立者(以下、「はじめびと」と呼ぶことにします)は、人を集め、活動の形をつくり、それを維持していかなければいけませんが、そういったことは設立前から想定しています。逆に言えば、そういった人でないと団体の立ち上げはできません。
それに対して、サークルなどの団体にやってくる人(以下、「さんかびと」と呼ぶことにします)は、その活動内容に惹かれてくるのであって、その団体の維持に努力することまでは想定していないことが多いのだと気づきました。
「はじめびと」と、「さんかびと」たちにはこうした感覚のずれがあるわけです。
その結果何が起きるかというと、「はじめびと」が活動の下準備を行い、「さんかびと」がそこに参加する図式ができあがります。さながら居心地のよいバーのマスターとお客さんのようです。
さらには、人が増えても「はじめびと」がいる間はその人に任せっきりになり、「はじめびと」がいなくなった途端に団体として成立しなくなってしまうのです。常連さんでもマスターの仕事内容は知らないので、突然店を継げと言われてもできないということです。

こうした事態を避けるために、ORUTOでは「情報開示」を徹底してきました。関係する情報をすべて一か所に集約し、いつ誰が何をしているのか、といったORUTOの現状がいつでも誰でも把握できるようにしました。特に折展(後述します)の準備期間中は全員が集まれない中で決定していく事がらがあったので、このしくみはとても重要でした。
ただし、全員がきちんと目を通してくれていたかというと、残念ながらそこまではいきませんでした。折展のときは、はじめての作品展を確実に成功させようとするあまり、ほとんどの責任が発生する作業を私一人で行ってしまったので、自分がしなくてもどうにかなる、とメンバーに感じさせてしまったからではないかと思っています。
こうしたさじ加減も非常に難しいです。

もうひとつ感じてきたのが、多くの人が「縦割り組織」の必要性を感じていない、ということです。
ドラマや映画ではよく、縦割りの組織(以下、「縦割り組織」と呼ぶことにします)が柔軟に動くことができずに、指揮官がいない横のつながりによる組織(以下、「横割り組織」と呼ぶことにします)に翻弄される、といった様子が描かれます。私自身もじれったいなと思いながら見ているのですが、上層部が自らの保身のために迅速に動けないこと、下層の人たちが非常に優れていることのせいでそう感じるだけで、多くの場合、「縦割り組織」のほうが「横割り組織」よりも無駄なく動くことができます。

例えば、多くの団体が協力して催しを開催することになり、その準備をするとしましょう。
― 作業開始の予定時刻に会場に入ると、すでに準備作業は始まっていました。
会場のあちこちに人が集まって何かしているようですが、それぞれどんな作業をしているのか、どこに人手が足りていないのか、よくわかりません。
誰かに訊いてから作業に加わったほうがいいと思い、周りの人たちに尋ねてみましたが、皆よくわからないと言ったので、とりあえずその集団の作業を手伝うことにしました。
そこでの作業も無事おわり一安心していると、別の場所がにわかに騒がしくなってきました。
なんと重要な機材の搬入が後回しになっていたのです。
結局、予定の開始時間には間に合いませんでした ―
現実の「横割り組織」の例として、あながちありえない例ではないと思います。

どう見ても非効率ですね。
ざっと考えても、
・時間が守られていない
・作業状況が把握されていない
・作業の順序が決められていない、あるいは把握されていない
・担当が決められていない、あるいは把握されていない
ことが問題です。

これから、「横割り組織」がうまく運営されるためには、「一人ひとりがすべての行動について完全に理解している」必要があることがわかります。
そういう想定で例を読み返してみると、問題はないことがわかります。

ただし現実には、こうした状況をつくるのは難しいです。
自分は関係しないと思われることまですべて把握するのは負担ですし、そもそも自分がそこまでできるとは思えません。

ではどうするべきだったのか。

「『縦割り組織』にして、リーダーを決め、リーダーだけはすべてを把握しているが、その代わり作業には参加しない」ようにしていればどうなっていたでしょうか。
もう一度読み返してみればわかりますが、うまくいきそうですよね。
何かわからなければリーダーに訊けばいいですし、もっと遡るならば、リーダーが会議を開いて事前に計画を立てることもできるはずです。

さらに言えば、各団体の中ではスムーズに情報伝達ができるであろうことを考えると、団体ごとに役割を割り振り、それぞれの代表者を集めた階層を置いて、その上に全体のリーダーを位置づければ、無理なく「縦割り組織」をつくることができるでしょう。
こうすれば、例えば小さなことであれば全体のリーダーにまで訊きにいかなくても、担当の団体の代表者に直接尋ねることもできるようになり、より素早く動くことができるようになるはずです。

以上、私の考えを書き連ねただけですが、しごく一般的なことなので、誰かの役に立てればうれしいですね。



むすびつくORUTO


ORIGAMI CHALLENGE



「ORIGAMI CHALLENGE (オリガミテャレンジ)」は、折り紙愛好家が交流を深め、新しい何かを得られる場となることを目指して、2014年2月にはじめました。

背景として、折り紙に関係する集団である日本折紙学会、およびそれに関連する活動の実態がありました。

「折紙探偵団コンベンション」および「折紙探偵団地方コンベンション」は、東京、および関西、名古屋、静岡、九州で毎年一度ずつ行われている大会です。
応募によって誰でも参加することができ、また会期中に行われる「JOAS創作折り紙コンテスト」にも特別な応募資格は必要なく、開かれた催しであるといえます。愛好家たちが直接顔を合わせて交流できる貴重な場ですが、年に一度しかないということ、最も規模が大きな東京コンベンションに地方から参加するためにはそれなりの費用がかかってしまうことなど、構造的な欠点が存在します。

「折紙探偵団友の会」は、折紙探偵団マガジン(後述)の読者組織です。東京、静岡、関西、東海、九州に存在します。定例会やコンベンションなどの活動を行っており、いずれも誰でも参加できる催しで、開かれているといえます。ただし会の数は少ないので、会期や移動の問題は存在します。

「折紙探偵団マガジン」は、日本折紙学会が発行する機関誌です。折り図や展開図だけでなく、折り紙を多面的にとらえる連載やエッセイなど多岐にわたる内容です。しかし、購読者が限られるためか、各コーナーの執筆者の選定方法・基準が不透明な上、東京友の会の定例会報告のみがやたら丁寧であるなど、平等で開かれた紙面づくりという印象はあまり受けません。せめて読者が自由に投稿できる仕組みがあればよいのですが。

「国際大学折紙連盟 ICOA (イコア)」は、世界中の大学生・大学サークルによる団体で、各地で作品展を開催しています。ORUTOも参加しています。大学生という一定のまとまりに絞ることで特徴が出るのも確かですが、大学生以外が参加できる組織があってもよいと思っています。

以上を総合すると、次のような特徴が見えてきます。
・東京への一極集中
・直接交流の偏重
・特定の年齢や所属の優遇
これらは必ずしも悪いことではありませんが、こうした偏りからずれた場があれば、より強固なコミュニティができると考えました。

そうして生まれたのがORIGAMI CHALLENGEです。
実施の形式は次のようになっています。

・参加に必要な条件などはありません どなたでも参加できます
・毎月お題となる作品またはテーマを部門ごとに決定します
・部門は「COMPLEX(コンプレックス)部門」と「LIGHT(ライト)部門」にわかれています
・COMPLEX部門はコンプレックス折り紙など複雑な作品を扱い、LIGHT部門は比較的簡単に折れる作品を扱います
・お題の決定にはアンケートを利用し、参加希望者はだれでも投票、あるいは作品の提案ができます
・1カ月の間に作品を制作し、翌月の月初めに公開します
・作品の公開にはTwitterのハッシュタグ機能を利用し、 #折り紙作品折り比べ企画 をつけてツイートします

これにより、
・地域による参加への困難度の差はなくなります
・直接交流できない代わりに、高頻度でやり取りできるようになります
・年齢や所属による区別はなくなります


今後も進化させながら続けていくつもりです。



つなぐORIGAMI CHALLENGE


ORI-TEN



「折展 ORI-TEN (オリテン)」は、ORUTOの作品展として、2015年に初めて開催しました。
やりたかったことは
・来場者の方々に現代の折り紙を認知してもらう
・折り紙について余計な知識のない来場者の方々の感想を聞く
・他大学の折り紙サークルに向けて、展示の方法を発信する
といったところですが、突き詰めれば
・自分で展示ひとつをすべて企画・運営してみたかった
ことが原点です。

はじめに、展示の名前と、ロゴから考えました。
折り紙の「折」と、作品展の「展」で、折展。わずか二文字で表現する、凛とした雰囲気と、一度見れば覚えられるシンプルさから決めました。
ロゴはこの二つの漢字の中に折り紙の要素を組み込むことにして、バランスを見ながら調整した結果です。
「折」の字には簡単な蛇腹を沈め折りしたもの、「展」の字には折り鶴の展開図を組み込みました。追加するそれぞれの線をどこで止めるか、漢字として読めるようにする線の太さのバランスなど、こだわりが詰まっています。


つづいてキャプションをデザインしました。
フォントの選定、文字サイズと余白のバランス、などを読みやすさ、カードのサイズなどとバランスさせながら決めていきました。
突き詰めすぎたせいで、フォントのサイズとカードのサイズのバランスがシビアになり、結局、テキストボックスに打ち込んだキャプションデータを一度画像データに変換してから縮小して所定のサイズにする、という手間のかかる方法になってしまいましたが、プレーンで美しいものができたと思っています。
7 cm × 7 cm のケント紙に印刷しました。
コピー用紙に手書きしただけのものだと、読みづらい上にすぐ反ってしまったり折れてしまったり、風で飛んでしまったりと、つくるのが簡単であることくらいしかいいところがありません。
何より丁寧さが伝わりません。
丁寧な仕事にのみ、信頼感や存在感を感じるものです。


さらにキャプションに関して、各表記の見方をわかりやすく示したカードをつくりました。


「ごあいさつ」の文も書きました。
作品展ですから、主催者の代表者からのごあいさつを掲示しました。

ごあいさつ

九州大学折紙同好会ORUTOは、201310月にその産声をあげました。
それから2年。ついに初めての作品展を開催します。

「折り紙」と聞いて、あなたはどのようなものを思い浮かべるでしょうか。
折り鶴?奴さん?
現代の折り紙は、あなたの想像を超えます。
いまや折り紙は、どんな形でも生み出すことができるのです。

本展「折展 ORI-TEN」では、そんな いまの折り紙を感じていただける、さまざまな作品を展示します。
名作と評される、作家の作品を再現したものから、会員がゼロから生み出したものまで、使う紙の色、質感、ひとつひとつの折り加減にこだわった作品ばかりです。
見えない苦労・工夫もたくさんありますので、ぜひ制作者本人に尋ねてみてください。

それから、あなたには、紙を手に取ってもう一度折り紙に触れてみてほしいです。
だれもが一度は経験したことのある文化でありながら、子供の遊びだと忘れ去ってしまうのは、とてももったいないことです。
本展がそのきっかけになることを願っています。

それではごゆっくりお楽しみください。

201511
九州大学折紙同好会ORUTO 代表 吉武勇人

それから、メンバー紹介のカードを掲示し、全員がネームプレートを身に着けました。
メンバーが何人いるのか俯瞰でき、またメンバー本人と作品を結びつけることができます。


最後に、ポスターをつくりました。
ロゴに合うようにシンプルな文字で、余白を生かすようにデザインしました。


すべての要素は、美術館の展示をイメージしています。

作品にこめられたのと同じ量の想いが、展示空間を豊かにします。



みせるORI-TEN